***幸福の女神***
ぱたぱたぱた...。
「ロイ、朝だよ。起きてる?」
幼妻が軽やかに廊下を早足で駆け、寝室の扉を開けて夫の様子を見にくる。
扉からひょっこり中をうかがうように顔だけ覗かせる。
白を基本とした寝室は清潔感と安心感を漂わせ、広く間取りを取っていて、大きく開かれた窓からは朝日がやわらかく差し込まれ、まだそこで眠っている漆黒の髪を強く美しく反射している。
漆黒の髪を持つ人物は頭まで布団を被りピクリとも身動きしない。
「ろ〜い・・・?」
部屋の中に入ってきたエドワードはあまり大きくない声で再度夫の名前を呼ぶ。
だが、返事どころか身動きひとつしないのでまだ寝ているようだ。
エドワードは溜め息を吐きながら、スタスタとロイの寝ているベッドへと向かう。
「ねぇ、御飯できたんだよ?」
ベッドへぽすんっと腰を下ろし、ロイが頭まで被っている布団を剥ぎ取りながら声を掛ける。
ロイはよほど深い眠りをしているのか、布団がなくなったというのに眉一つ動かさない。
「頑張って作ったんだよ?」
自分が眠たくても早起きして、唯一人の愛しい人に食べてもらいたくてせっかく作った料理が冷めてしまう。
ちょっと拗ねたようにエドワードはロイの頬を愛しそうに、実際愛しい視線を向けながら撫でる。
撫でた左手の薬指には幸せの象徴、結婚指輪がキラリと光った。
指輪は派手過ぎず、地味過ぎず、センスの良さが感じられ、エドワードの細く美しい指にピッタリだ。
視線はどこまでも幸せそうの色が浮かんでいる。
今の瞬間を楽しんでいるようにも取れる。
「仕事に遅れちゃうよ?」
早く御飯を食べないとハボックが迎えに来てしまう。
あの飄々とした部下がまた煙草をくわえて「大将の夫を早くつれてこないと俺までリザに怒られるんだからな;;」とまた文句をブーたれるだろう。
文句を言っているのにまったく困った感じを見せず、おどけて言う様で前と同じく自分と接してくれるハボック。
部下にまで迷惑がかかってしまうから妻である自分がなんとかしないと!!
新妻だから夫を遅刻なんてさせるわけにもいかないから、今日から無理をしてロイよりも早く起きたのだ。
ロイはいつもエドワードよりも早く起き、出掛ける前に起こし目覚めのキスをしてから仕事に行くのだった。
エドワードが起きれないのは仕方の無いことだろう・・・。
ロイの愛情を小さい身体一身に受けとめているから、次の日の朝は動きたくても動けないのだ。
妙に意気込んでいるエドワード。
実際エドワードはロイの妻になってから何をすれば良いのか分からなかった。
ロイはただ側にいてくれるだけで良い。
と優しく微笑みながら言ってくれたが、側にいるだけでは自分が納得できない。
ロイのためになにかをしてあげたい!!そう思って、ロイが朝の支度をしている間にベットを抜け出し、もうすでにマスタング夫妻の家に車をつけてたっぷり待っているハボックの元へ向かったのだ。
なにかしてあげたいけど、何をしてあげれば良いのかわからない!!
と言うと、ハボックは苦笑いをしながらさっきのセリフを言ったのだ。
それだ!!と思い、早速それ動かぬ身体に鞭を打ち今日実行したのだったが・・・。
まぁ、その後にロイが出てきて何故妻と部下が親密に話し合っているのか。と怒りをあらわにして部下に詰め寄ったのだった・・・。
その日のハボックの業務は素晴らしいものだったらしい・・・。
いつもなら起きている時間のはずなのだが一向に起きる気配を見せないロイ。
布団を剥ぎ取っても、頬を撫でても、いつもならば近寄っただけで目を覚ますロイとしてはおかしかった。
どうかしたのだろうか?
でも顔を見ても苦しそうな表情はしておらず、安らかに眠っている・・・。
安らかに・・・?
まさか!!
と思い、ロイの口元に手を当てるが、息をしているのが確認できてあらかさまにほっと安心するエドワード。
自分の勘違いで本当に良かった、と・・・。
その様子にもう我慢ならない、といったふうにロイは笑い出した。
「く・・くく、ははは・・・」
突然身体を曲げ笑い出した夫を呆然と見つめる妻エドワード。
今までなんともなく作り物のように製錬された顔で眠っていたロイが、いきなり顔を歪めて笑い出したのだから驚かないほうが無理という話しだ。
「ぇ・・?ロイ?」
何故笑っているのかわからず、笑いながら身体を起こしているロイに疑問の視線を送る。
「くっ、ごめんごめん・・」
エドワードの視線に気付き謝るが、今だ笑っているのだから謝っても説得力がない。
「君があまりにも可愛かったから・・・」
目尻にうっすら涙を浮かべながら、エドワードの身体を優しく抱き寄せる。
そこでロイが何に対して笑っていたのか分かった聡いエドワードは、怒りに身体を振るわせた。
「ロイ!!今まで起きてたんだろ!?」
ずっと起きていて今まで狸ね入りをしていたんだ!?
顔を真っ赤にしながらロイの目を見ながら怒鳴るエドワード。
今までの行動を全て見られたとなると、恥ずかしくてこの場から逃げ去りたい衝動に駆られた。
逃げ出そうとロイの腕の中で暴れたが、ロイの腕は力強く心地よいから無理には逃げ出せなかった。
「こんな朝は新鮮だと思ってね。君の声は心地よいからずっと聞いていたくなったんだよ・・・」
大人しくなりロイの背中へ手を回したエドワードをもっと強く抱き寄せながら本音を耳元で囁いた。
「ばっか・・・。そんな恥ずかしいこというなよ」
ロイの胸に頬を擦り付けた。
真っ赤になっている顔を見られたくないための事だったが、この行動がロイは気に入ったのか、エドワードをベッドへと押し倒した。
仰向けに倒されたエドワードは近づいて来るロイの微笑む顔を見て、あ、キスされるな・・・。そう思い、
「聞こえてたと思うけど、御飯できたよ」
キス寸前でそっけなく言ってやった。
遠まわしにキスはするなと言っているのを分かったのか分からないのか、ロイは、
「分かっているよ。君の愛情たっぷりの御飯は残さず食べさせてもらうよ」
極上の笑みを浮かべた。
俺はオカズじゃねぇよ・・・と苦笑いしながらも、その言葉と笑みでエドワードは幸せの気分になった。
その後、
「おはよう、愛しの 」
遅い朝の挨拶と、エドワードの名前を言い、顔中にキスをエドワードにおとした。
エドワードは嬉しそうに、離れたロイの唇を自分からまたくっ付けたのだった。
幸せ。
あぁ、自分はなんて幸せなのだろう。
こんな幸せでいいんだろうか?
一番大好きな人の側にいられて・・・。
幸せ過ぎてどうかなりそう・・・。
この幸せを噛み締めていきたい・・・。
この幸せを持続させるために努力をしたい・・・。
今この瞬間を抱きしめたい・・・。
この名前に恥じないように精一杯、命一杯生きていきたい。
**END**
なんだか恥ずかしい小説だ。ほのぼの目指して頑張りました昔の自分。だけど惨敗・・・。
エドの女の名前はもう決まっています。
そのうち小説で出てくることでしょう。
*2004.8.9
*2005.9.2 訂正