***下心 〜後編〜***






随分と静かになった室内の様子を伺うために耳をすますロイは、まるでエドワードが服を着ないで逃げ出していないか確かめるよう。

女性が服を着替えるのに十分過ぎる時間が過ぎようとしても、一向にエドワードの動く気配がしない。
物音さえも聞こえない静けさ。

「エディ?着替え終わったかい?」

こんこん。
と、中で放心しているであろうエドワードの意識をこちらに向けるために、薄笑いを浮かべながらノックをした。

「エディ言うな!!」

すると、元気な声だけが返って来た。
たぶん反射的に返した言葉だろう。
喉の奥でくつくつ笑うロイはエドワードが今どんな格好で、どんな事を考えているか、どんな顔をしているかなんてお見通しだった。

室内で着替えたエドワードは自分の格好を備え付けの鏡で見て、絶望感を覚えた。
絶望感はもう嫌というほど味わってきたが、それとはまた別の味わい・・・。
もう穴があったら入りたい状態だ。

見なれない自分の姿。

ひらひらした黒いスカート。
しかも履いてみると結構短い。
髪の毛もどうにか服に合わせる為、女らしさを強調するために解いてみたが全然不釣合い。

女の子の服が似合うと思った事は一度たりともない。
ないが、エドワードだって女の子の端くれ。
端くれだって端くれ並に端くれほどの気持ちというものがある(はず)。
可愛い服だって着てみたい、ちょっとしたオシャレもしてみたい、そう思った事は何度もある。
が、実際に着てみると実感した。
これほどまで自分に似合わない服が存在していたとは・・・。
いや、自分がこんなにも可愛らしい服が似合わないなんて・・・。
少しでも期待していた自分が馬鹿らしく思った瞬間を、身体で体験をしたことになった。

そしてその服の下には世にもおぞましい物を身に付けている。
考えるだけで血液が凍ってしまう。

下着という物だ。

いや、エドワードだって下着を付けてはいる。
付けているがこんな女性用の物ではない。
男物だ。
それにトランクスだけで、上の下着(いわゆるブラジャーという物)は買った事もなければ触った事もないほど貴重な存在だった。
そんな未知なる物さえも自分の上官は着けろと命令をするのだ!
理不尽で泣けてきた・・・。

エドワードが見ても可愛らしい柄で、上下ともセットだった。

服を全て脱いで下着を着けた時は、なんだか自分が犯罪でも起こしているような気分を味わった。
女なのに何でこんなに惨めな思いをしなければならないのだ・・・。と軽く沈む。

それ以上にこの部屋には鍵が付いていない。
それもそのはず、この部屋はロイ専用の執務室から直接繋がる仮眠室。
東方指令部の司令官の仮眠室を無断で中に入る輩はまずいないだろう。
扉の前ではロイがいる。
扉一枚隔てた向こう側にロイ・男の人がいる事を意識しすぎて、手が震えてうまく着替える事ができなかった。
ロイがいきなり扉を開けて入って来たりしたらもう自分は終わりだろう。
ビクビクしながら、ちょっかいを嫌というほど出してくる上官がいつ入って来るかと心配しながら、全ての着替えを終了させた。

着替えている間に扉が開かなかった事に安堵しつつもある疑問に気がついた。

「なんで大佐は俺のサイズを知っているんだ・・・?」

心のつぶやきが口に出て狭い室内の空気を振るわせた。
エドワードも震えた。
ビックリするぐらいアンダーもトップもピッタリなのだ。
人様に言っても恥ずかしくはないサイズで、コンプレックスの一つでもある胸のサイズ。
弟にも幼馴染にも言ったことがないものをどうしてただの上官が(ただの、ではないが・・・)知っているのだろう。
サラシで押しつぶしていたのに・・・。

ロイが恐ろしく思えてしまったエドワードだった。

そんなことを頭の中で考えていたらかなりの時間が立っていたらしく、ロイが焦れて扉を開けてきた。

「開けるよ?」

「ぎゃぁーーー!!開けんじゃねぇよ!」

思考を停止し、今にも開きそうな扉に向かって、たった今脱ぎ散らかした服を無残にも踏みつけながらダッシュで向かった。
ロイがドアノブに手をかけひねり押そうとしたが、凄まじい足音がして扉を開けるのをはばかられた。
押そうとしてもエドワードが内側から押し返しているので、前に進むことができない。

「・・・・・手をはなしなさい」

「ぜってぇ放さねぇ!てか、別に俺の服なんか見なくても良いだろうが!!」

「そういうわけにはいかないさ。私が支給した服だから見る権利は私にある」

「なにわけのわかんねぇ事言ってんだよ!?」

「筋は通ってると思うが・・・」

会話をしながらもお互いの力比べが続いている。
扉がぎしぎしと危なげな音を発しているがお構い無しに、死んでも放すもんか!!と歯を食いしばって耐えている。
エドワードは扉に背を向け全体重をかけ、開けさすまいと努力した。
が、勝てるわけもなくあっさりと押し開かれてしまった。

「うぅ・・・!」

ずりずりと身体が後退していき、ロイの足が割って入ってきた。

「はいはい。勝てるわけないから大人しくしなさい」

身体半分入りこんだら後は簡単。
ある程度軽くなったところで思いっきり片手で押し出せば簡単に扉は中への進入を許した。
エドワードはその反動で前のめりになり、床に倒れこんでしまった。

「痛ったぃ・・・」

手から倒れたし、床がカーペットだったため怪我はしなかったが、エドワードは恨めしそうに自分を突き飛ばした張本人を振りかえり睨みつけた。

しかし、睨みつけていても全然威力がなく反対に誘っているかのようにロイには映っていた。
エドワードの格好がいけなかった。
前に倒れた所為で軽く四つん這いっぽくなり、丸いお尻をつき上げ、しかもスカートがめくれ上がっている。
本人は気付いていないだろうが、ロイがプレセントしたショーツが丸見えだった。
眉はきゅっと釣り上がり、つり目気味の瞳は上目遣いになり床と軽くぶつかったため涙目になっていて、唇はきつく結ばれていた。

  いかにも私を食べて!!
ここにイれて!!

って言っているようにしか見えないし、聞こえない。
ぷちっとロイのなにかが切れたらしい。

「痛いじゃねぇか!この無能!!」

ロイはその妄想心にしたがい、床に倒れて罵詈憎音を吐き出すエドワードの上に覆い被さった。

「まったく!あんな派手に扉を開く事ないのに!ちったぁこっちの事も考えろよ・・・っておい!!なにしてんだよ!」

「え?なにって、見て分からないかい?」

ノリツッコミかい?元気があるねぇ。
ははは、と爽やかに笑いながらエドワードに逃げられないように上半身を床と自分の身体で押さえつけ、腰に手を添えお尻だけは高く持ち上げた。

「離せぇ〜!!」

うつ伏せのため対した抵抗が出来ないで(むしろ腰を激しく動かしているからますますロイへ密着させていることを知らないエドワード)、ロイの手を服の中へ容易に進入をさせてしまった。

ロイはエドワードを見て自分の見立て通りになった事に大満足した。
そしてこのまま一緒にデートでもしようかと計画を立てていたのだが、エドワードの思いがけない姿にデートするまもなく下半身が元気になってしまったため、急遽計画を変更したのだった。
エドワードに似合う服と下着を店員に変な目で見られながらも買って来てよかった・・・。と心から思った瞬間だった。
両腕を左手で容易に力任せで押さえこみ、顔をエドワードの耳元へ持っていき首筋に息を吹きかける。

「ぃやだぁ・・・!!」

ビクリ!とエドワードの身体がロイの下で震えた。
さっきまで騒いでいた子供らしい雰囲気は一気に四散していて、変わりに年齢の割には艶っぽいなんともいえない色気を醸し出した。
剥き出しのお尻を大きく長い節くれだった指が辿っていく。
辿りついた先はすぐそこで、ふっくらしている秘所だった。
少し触れただけできゅっと身体が小さく縮こまり、そこからこみ上げてくるものを耐えている。
さっきまでとは違い、全身の血液が沸騰しそうな勢いで身体中を駆け巡っている。

エドワードは腰をなんとかロイの身体から離そうともがくが、がっしりと腰を固定されているからびくともしない。

頭を押さえつけられているような態勢なので、苦しいが下半身は男の愛撫を待っているかのように熱を持ち始める。

薄いショーツの上から秘所の周りを指で撫でていくだけで、中心には触れてこない。
周囲を撫でられるだけでは足りないが、その愛撫だけで中心はヒクツキだして、内部から蜜を流し始めた。

「あぁ、可愛いな・・・エディは。そんなに私のものが欲しいのかい?」

「ぅう・・・誰もそんなこと言ってないのに・・・」

口ではそんなことを言っていても、もっと切実な愛撫が欲しいと秘所は訴えている。

周囲を撫でていた指が離されたと思ったら、腕が腹の下に通され前から愛撫をはじめ、今度はいきなり指の腹で割れ目をなぞられた。

「なっ!」

すでに濡れている其処はロイの動きに合わせて動きやすく手助けをしてくれる。

「え!?」

ショーツを脱がされた感じもしなかったし、横から指を入れられている様子もない。
ピッタリと薄い布が秘所全体にくっついている。

「やっぱりこんな下着を着けるのはやりやすいな」

ロイの言葉でようやく下着の構造である事が分かった。
たぶん真ん中に穴が開いているのだろう。
ショーツを履いていてもやりやすいように。
わざわざ脱がす手間を省くために。
そんなものを自分に着せたロイに腹正しくもなったし、何故履く時に気がつくことが出来なかった自分が悲しくなった。
なんだかスースーするな・・・。とは思ったけど、辱がらずにしっかり下着を見れば良かったと激しく後悔中のエドワード。

それにしても、やっぱり下心がついてきたか・・・!
この男が下心なしに親切心で俺に服一式を揃えるわけがない!その事を分かっていたはずなのに、むざむざこの男に嵌ってしまったのだ。

激しく後悔しながらも、ロイの動きは止まらない。

割れ目を沿っていた指が中へ入れられ、確実にエドワードの感じるポイントを抉る。

「エディ・・・」

「あぁ・・・んっっ!」

指は身体の負担に合わせながら徐々に増やされ、最終的には三本呑み込んだ事になった。
わざとらしく、くちゅくちゅとエドワードが嫌がる卑猥な水の音を立てて、聴覚で興奮させる。
気持ちが良すぎてエドワードの腰は、覆い被さっているロイの腰に押しつけるように動く。
何故こんな事を強制されなければならないのかと憤慨するエドワードだが、下半身は熱を帯び解放を求める。
達するためには男に懇願しなければならない。

男の気まぐれで焦らされていては溜まらない。
そう教えられたから。

「ぅあぁ・・・、早く・・・」

「ん?早くなんだい?」

言いたい事は分かっているはずなのだが、ロイはエドワードの口元に耳を寄せ先を促すように急かす。
もう腰を支えていなくてもエドワード自ら腰を浮かしているので腰を支えていた腕を外し、エドワードの口内に指を挿しこんだ。

「んんっ!!」

急に口内に異物が入りこみ、上手く喋る事ができなくなり眉を顰める。
どうにか指を退かそうと開いている手で外そうとするが、なかなか上手くできず、唾を呑みこむことも出来ないで唇の端から呑みきることができない唾液が溢れ出した。

「あふっ・・・、んん・・・」

「何を早くしてほしいんだい?指の動きかい?」

そう言うとロイは指の動きを早くし、抜いたり挿したり、中でバラバラに動かしてみたりした。
エドワードは身体をビクビク痙攣させ頭の中を真っ白にさせた。

力の抜けたエドワードの身体を支え、口内から指を引きぬいた。

「・・・・早いな」

「はぁはぁ・・・、んぅ、うっさい!!」

まだ膣内に入れられている指を奥まで誘い込もうとヒクヒク動いている。

「どうだい?この下着。便利だろう!服を脱がさなくてもこのままできるのだから」

「すごくともなんともねぇよ!!むしろ最悪だ!」

「ふむ。君は服を全て脱いでしたほうが好みかね・・・」

「なっ!そんなことをいってるんじゃない!!あんたにこんなことされている自体が・・・!」

「でもそんな下着を履いているのだから一度は試して見たいではないか」

「人の話も聞けよ!!」

「では、早速いこうか」

「ぅえっ!?・・・あぁああぁ!!」

会話をしていたのに前ぶれも無くロイのモノを後ろから押しこまれ、エドワードは目を見開きその一瞬を耐えた。
快感とかそういうもんじゃなくて、異物が押し込められた事によってお腹が圧迫され、苦しくなった。

「ふっ・・・っふぅん・・・」

「動くよ」

まだ呼吸が整っていないのに、一言断ってロイは勝手に動き出した。
いつのも態勢よりより深く繋がることができる態勢なので、ロイは奥まで一気に突っ込むと、根元まで咥え込んだエドワードの秘所が限界まで開き、ミチミチと悲鳴を上げた。
だが、痛みはなくロイによって動かされていくうちに互いの肉が擦れあい、刺激を生んだ。

ズチュズチュッ・・・。

狭い室内にエドワードの気持ちのよさそうな声と、激しい粘着質の音が指令室で働いている人に聞こえるのではないかというぐらいに響いている。

エドワード自ら腰を動かし、もっとも気持ちの良い所を見つけそこにロイのモノを擦りつけるように動かす。

「随分と積極的なんだね・・・」

「あぁ・・んぅ、早く、終わらせたいんだよ!!」

「つれないこといわないでくれよ・・・」

そう言うと、ギリギリまで引きぬいて一気に奥に叩きつけた。

「ああぁん!!」

今までで一番背中をしならせ快感の波に耐え、小さく震える。
でも決定的なものではなかったため、達する事はできなくロイを咥え込んでいる部分がヒクヒクする。

その振動までも感じるのか、ロイのモノがエドワードの中でさらに大きく膨れ上がった。

「えっぅ、まだ・・・?」

大きくなるのか、と続こうとした言葉は空気を振動することはなくエドワードの口の中で四散した。
ロイの動きが一段と早くなり、エドワードを追い詰め始めたのだった。
なにも考える事ができなくなり、身体をロイに良いようにされっぱなしになっている。

「あっあっあっあ・・・」

ガクガクと乱暴に身体を揺さぶられ、内部を深く抉られ、最終に向かってスパートを掛ける。

「エディ・・・っく!!」

「あっ・・・・!!」

頂点に二人で上り詰め、二人で達した。
エドワードはふるふる震えたあと、ガクっと床に倒れこんだ。
そのとき繋がっていたところからロイのモノがずるりと抜け、なんとも言えない感覚を味わった。

「やっ・・・」

二人とも服はまったく乱れていないが、エドワードの下肢だけ愛液とロイの精液でどろどろに汚れている。
この場面だけを見たら、ロイがエドワードにちょっかいを出し転ばしたという状況に見えるだろう。

「エディ、よかったよvv」

チュッ。

ロイはにっこり笑顔で激しい息継ぎをしているエドワードを上向けにして、今日はじめてのキスをした。
これだけお互いを貪ったのにキスをしたのが新鮮に思い、瞳を閉じて静かにロイの口付けを受けた。

「・・・俺は良くねぇよ・・・」

「これだけ君を味わったのに、全然服が乱れていない。すごいじゃないか」

「なにがだよ!!」

「だから、服を脱がなくても事に及べるという事だよ☆」

「・・・・・・・まさか」

「さぁエディ!!今からデートに出かけようじゃないか!」

「やっぱり!嫌だよ!こんな服で行けるか!しかもパンツが・・・!」

「穴が開いてるって?だからいいじゃないか」

ロイはポケットからハンカチを取り出し、エドワードの下肢を清める。
逃げ様としても下肢に力が入らないから逃げ出すことができないし、ロイの顔が自分の恥ずかしい場所を直視しているから恥ずかしくて身体を動かすことができない。
もぞもぞと少しずつ後退して行っても、足を掴まれ機械鎧の足を肩に担がれ動きを封じられた。

今からデートに行く気まんまんだ。
ロイが黒い笑顔を浮かべている。

「いやぁ、デートが楽しみだな・・・」

水を被った事が間違いだった。

原因である指令室にいる軍人に怒りを覚え、こんな服と下着を軍部内に用意をしていたロイにもなんとも言えない感情を覚えた。

そもそも気まぐれで東方指令部に来たのが間違いだったのだ・・・。

そんなことをいっても後の祭りであって、今どうする事もできない。

エドワードはデート先で起こるであろう事にただ震える事しかできなかった。




**END**




ロイさんが大変態な話でした。なんだかいろいろノーコメントで・・・;;
何でこんなの書いたんだろうみたいな;;

*2005.1.9
*2006.2.17 訂正