一緒にショッピングなんて、何年ぶりだろう。
ウィンリィともあんまりした記憶が無いくらいだから、母さんが生きてた頃なのかな?
なんだか、ドキドキ胸が弾む。
こんな感覚久しぶり。
隣に温もりがあるからかな?
***女の子の日 中半***
どたどたどたどた・・・・。
凄い勢いで執務室に向かって来る足音にロイは反応した。
いつのもように愛しい者かと一瞬思ったが、足音が重苦しいしどかどかと醜く切羽詰った感があったから、どうやら違うようだ。
あの子のはもっと軽やかに、羽でも生えたかのように心地よい足音を響かせてやってくるものだ。
一瞬でも間違えたことに「あ〜・・・」と小さく叫び声をあげて自己嫌悪をするロイ。
なんかまた厄介ごとでも起こったのだろうかと、溜め息を吐きながら顎に手を置いた。
「大佐!!」
扉を開けて入って来たのはやはりと言うかなんと言うか部下のハボックだった。
いつのものらりくらりした何を考えているのか分からないような顔付きではなく、眉を潜めて変な顔をしていた。
全力で走ってきたためか、肩で息をしながらロイが座っている机まで無遠慮にどかどかと近づいてきた。
「どうした?」
なんだ、ハボックか。
そう表したかのような表情で息を整えているハボックを半目で見た。
こんな顔をしているくらいだから事件ではないだろう。
まったく無駄な時間を取らせて・・・。
エディといる時間が少なくなるではないか!!と、勝手に愛称をつけて関係ないハボックを睨む。
「大変です!中尉が、中尉が・・・」
が、そんなロイの眼力をもろともしないでハボックは、身振り手ぶりであわあわ説明しているがまったく伝わらない。
「中尉がどうしたというのだ」
何だか男と話しているのがめんどくさくなって、書類にサインを再開しながらどうでもよさそうに尋ねた。
中尉は今非番をもらって友人と出掛けているのをロイは知っている。
さっき自分に断りを入れて帰ったのだから。
中尉が帰ったことがそんなにショックだったのだろうか?
たまには中尉も休暇がほしいんだから少しは静かにさせてやれ。
そう思ったが、口に出すのが面倒だったので心の中でハボックに言い聞かせた。
心の中でハボックに言っても伝わらないのだが・・・。
だが、次に出た言葉にロイは驚愕してしまった。
「大将を連れて買い物へ出かけてしまいました!!」
「なんだとぉ!!?」
ロイは椅子を床に叩きつけ机をひっくり返すように立ちあがりハボックに詰め寄った。
さっきまでのどうでもよさそうな顔付きではなく、思いがけない言葉に怒りと困惑で顔が引きつらせている。
「どうゆうことだ!!?」
ロイの迫力にびびり、後ずさりしながらも、
「今日の見回りで大将を見つけたんです。その時から中尉の様子がちょっと可笑しかったんですよ。それで強引に車に押しこめて指令部まできて、さっき一緒に買い物へ出かけたんっすよ!」
今までの出来事をごく完結に、そして的確に表現をした。
それを聞いたロイは無言でコートを手に取り執務室を後にしようとした。
その行動に慌てたのはハボックで、大佐の仕事が終わってなかったら中尉に怒られるのは自分なのだ。
報告はしたが逃げられるのだけはやめさせたいし、ホークアイに怒られるのは勘弁したい。
すでに廊下に出て早足で出口に向かう上官に向かって声を掛ける。
「っちょと、大佐!!書類は!?」
「もう全て出来ている!」
「そっスか・・・;;」
サボっているように見えて、全然サボっていなかったようだ。
どこへで掛けるかなんて言わずとも知れず。
中尉達を追っかけるのだろう。
今更追っかけたところで無駄だとは思うが、これから会う予定を取りつけていた者を横から掻っ攫われた者としては追っかけずにはいられないのだろう。
あぁ、ホークアイのことも大事だがこの事を言わなかったら、この恐ろしい上司の怒りと嫉妬の焔によって自分は焼かれてしまうだろう・・・。
上官に焼き殺されるくらいなら、大好きなホークアイに射殺されたほうがマシだ。
どっちにしても自分の命が危ういのは言うまでもない・・・。
消えかける上官の背中を追いかけるハボックだった。
いざ入るとなんだか落ち着かなくきょろきょろ視線をさ迷わせるエドワードに、微笑みながら飾られている服の前に行く。
ガラス越しから見ても可愛らしかった服は直接見ても可愛らしく、ホークアイにはとてもエドワードによく似合う服だと思ったから、
「これ、試着してみる?」
と、裾の刺繍が刺されているところを掴みながらエドワードに試着を促す。
「えっ、でも・・・」
エドワードは今更ながら自分が機械鎧の手足だということを思い出した。
確かに着てみたいといったけど、やっぱり・・・と思い留めてしまう。
こんな手足では可愛らしい女の子の服は合わない。
それに幼馴染には悪いが、こんな物をつけている身体を人前には曝したくない。
自分だって恥ずかしいし、他人だってこんな物を好んで見たいとは思わないだろう。
改めて自分で自虐的に思うと、悲しくなった。
ぎゅっと自分の右腕を左腕で握っていると、店の店員が近づいてきた。
「どうゆうのがお好みですか?」
営業スマイルで、妙な二人組の相手をする。
一人は女性で金色を下ろした髪に榛色の瞳、淡いオレンジ色のスーツをしっかりと着こなして、女でも見ほれるほどの美貌だ。
もう一人は一見女の子にも見えるが男の子のようで、背が低く深い金髪を三つ編みに同色の瞳、赤いコートに黒の上下の服を着ている。
女性のほうが男の子の肩を掴んで、
「この子を可愛くしてください」
笑顔で差し出してきた。
「ちょと、中尉!?」
店員も驚いたが、エドワードも驚いた。
可愛くしてくださいって!!
顔に一気に血が上っていくのが自分でも分かった。
絶対男だと思われているだろう、そして男が女の服を着るなんてどういう趣味だ?と思われるかもしれない。
店員は驚きはしたが、この男の子のような子供は女の子だったのか、とあっさり認知をした。
男の子には見えるがどこか疑問を感じさせる顔立ち雰囲気だったから、女の子だと分かってそっちのほうがしっくりときた。
おもわず俯いてしまったが、特に疑問を持たずに店員はエドワードの手を握り上を向かせた。
「かしこまりました」
にっこり笑って、エドワードを試着室へと案内する。
試着室へとエドワードを押しこめて、しばらくするとホークアイとここまで連れてきた店員が適当に服を何着か見繕って持ってきた。
手に持っているのはどれも可愛らしく、肌を出すことが嫌うエドワードに適した露出の少なめの服ばかりだ。
その中でディスプレイに飾られた服も入っていたことに気がつき、ホークアイの細やかさが有り難くなった。
時折エドワードを見て店員を話しを進めるホークアイ。
ためしに何着か服を着させたが、どれも似合うのだがどこかしっくりこない。
やはり、初めに見た服が強烈過ぎてその服をエドワードに着させないと気がすまないような感じになる。
エドワードが気になっていた服をやっと手に取り、それを着るように促す。
「ど、どうだろう・・・;;」
カーテンを引いて鏡の中の自分の姿を見たエドワードは、ちょっと顔が引きつってしまった。
服は可愛い。
申し分ないくらい。
デザインした人を尊敬しちゃうくらい。
いままで着てきた服達も。
モデルが・・・。
可愛いのだが、いかんせん自分には不似合いのように感じてしまう。
袖から覗く冷たい機械鎧の手。
スカートの下の右足とはまったく異なる機械鎧の足。
可愛らしくその場でくるりとターンして、鏡に向かい笑顔を向けてみた。
が、そのまま固まりせめて女の子らしく髪のでも解いてみようとして、トレードマークのみつあみを解いてみて再度チャレンジ。
エドワードは鏡を凝視し、重たい溜め息をついてしまった。
服が可哀想になってきてしまって、脱ごう・・・と服に手をかけたところ、ホークアイがカーテンを勢いよく引いた。
「似合うじゃない!!」
「おぉお!!?」
いきなりのことにビックリして固まっているエドワードをじっと凝視をしてから、ホークアイは店員と一緒になってうんうん顔を上下に動かし、笑った。
二人とも頬が心なしか上気しているよう見えるのは気のせいだろうか。
文句なしに似合う。
この服はエドワードに着られるために作られたとしか考えられなかった。
白いカーディガンは純情で純粋なエドワードにピッタリの色で、割りとゆったりしているがすっと通っていて、袖がふんわり波をうっている。
パステルカラーのピンクのワンピースは、腰ちょい上のカーディガンからふんわりと膝下まで伸びていて、うまくエドワードの体型をごまかしている。
機械鎧の部分は、手袋とブーツで存分にカバーできる範囲だ。
しかも、三つ編みから解いた髪の毛はウェーブになっていて、全体的にふんわり系になっている。
服を脱ごうとした態勢でそんなことを言われても困ってしまうエドワード。
顔は笑みが張り付いている。
「・・・ほんと?」
上目遣いでホークアイを見ると、銃で胸を撃ち抜かれたような感覚にホークアイは襲われ、顔が悲しそうに歪むがどこか笑っている。
詰まった笑みだ。
こんな美少女に見つめられたら老若男女だれでも言葉に詰まってしまうだろう。
「ほんとよ!!」
ホークアイと店員は力説し、今まで着た服を畳み始めた。
「これと、これと、これ・・・・全てまとめてちょうだい」
「かしこまりました」
その言葉を聞き慌てたエドワードは洋服とセットの靴を履き、試着室を出てホークアイに近づき、
「ちょっと中尉!こんなに服を買うの!?」
異様に燃える瞳をしているホークアイに問い掛けた。
「もちろんよ!全て貴方に似合っていたんだもの。買わないとね」
にっこりと微笑みかけながらも、手は服を高速で片付け、袋に詰めている。
店員も行ったり来りと走り回っている。
大量の服だ。
しかも何故か試着をしていない服までも袋に詰められていた。
ちゃっかりした店員は嬉々としてここぞとばかりに色々な服を服に詰め、金額を計算している。
こんなに燃えているホークアイを見たことがないエドワードはどうしようかとおろおろしていた。
あることに気付いて、これは不味いだろう!!と思い、
「中尉!!お金どうするの!?俺持ってないし、中尉に払わせるつもりないよ!!」
そう、お金が問題だ。
ホークアイに強引に連れていかれたからエドワードは今手持ちが何にもない。
それに、自分の服になる予定の服をホークアイに出させるのは気が引ける。
ここの基準の値段は分からないが、パッと見高そうな雰囲気を醸し出していて、これだけの服を買うのだから相当の値段になるだろうことは容易に想像できる。
でも、ホークアイは今回何度目かの極上の笑みを浮かべながら、
「私達の上司に払わせるのよ」
キッパリと何事もないように言い放った。
私達の上司ということは、ロイ・マスタングということになる。
エドワードはますます顔が引きつった。
ホークアイの周到すぎる作戦に感服するしかない。
店員に「あ、名義は東方指令部の司令官ロイ・マスタングでよろしくね」と、領収書までキッチリ切っている。
ピクピクするこめかみを指で押さえ、少し頭痛がしてきてしまった・・・;;
まぁ大佐の腐る程ある金の中から出るというのは万事オッケなのだが、国民の汗と涙の血税をこんなのに使ってもいいのだろうかと思う気持ちもある。
でも、やっぱり今から出す金はホークアイの金なのだから、罪悪感をどうしても感じてしまう。
そんな顔で見ていたらホークアイが、腰を屈めて目線をエドワードに合わせた。
「気にしないで」
自分の心の内が分かってしまったのかと一瞬焦ってしまったが、ふっとホークアイは頭に手を置いて会計を支払うためにその場から離れて行った。
撫でられた頭に手を置いてぼーとホークアイを見つめるエドワード。
自分はなんでこんなにもホークアイに優しくされるのだろう?
嬉しすぎて、嬉しすぎて、自分のしたことを忘れてしまいそうだ。
ぼーとっ突っ立っているエドワードを遠巻きに見ていた店員がやって来て、エドワードの手を引いて化粧室に連れて行った。
会計を済ませて大量の紙袋を支えてエドワードのもとにやって来たホークアイは、さらに衝撃の言葉を発した。
「さぁ、次いくわよ!」
「次!!?」
まだあるの!?って勢いでおもわず大量の服を買った店先で固まってしまった。
「まだ必要なものあるでしょ?一番必要なものが」
そう言って固まったままのエドワードの腕を引っ張り、ざわめき出した中央通りのさらなる賑わっている中へと進んで行った。
「あの店に入ってたっきりでてきませんね・・・・」
「女性の買い物とは長いものだよハボック」
いかにも自分は女性のことはなんでもしてます、みたいな感じ話す上司を横目でチラミして、また視線をエドワードとホークアイが入って行ったブティックに向けた。
建物の影から二人の青年が女性用のブティックを覗いているのはかなり危険な格好なのだが、服が軍服なので通行人は見て見ぬ振りで通りすぎていく。
だって、通報する先が軍だから・・・。
だが、目線はかなり不審者を見る視線。
その視線をハボックは痛痛しそうに受けとめているが、ロイはまったく気にせずに店に集中している。
あの後ハボックを連れてホークアイの足取りを追った。
幸いすぐに見つかり、二人が今張っているブティックに入っていたのを直前で発見したのだ。
ロイは半ば苛々しながら二人が出てくるのを待っていた。
ここまで来る途中でも考えていたことだが、何故中尉たエドワードを連れていったのか分からなかった。
エドワードがここへ来ることは分かっていたはずなのに、自分を差し置いてどこかへ行ってしまったのがロイを苛立たせる原因だ。
冷静な表情でブティックを見つめていたが、内心は疑問がぐるぐる回っていた。
ハボックはそんな上司を見て溜め息を吐いた。
何故ホークアイがこんなことをするのか、少し頭を回転させれば誰だって分かるはずだ。
それなのに、この上司ときたらあの金髪の子供のことになると周りが見えなくなり、あの子に近づく全ての人間が敵に見えてしまうときた。
そんなわけはあるはずないのに・・・。
むしろアンタが敵だっての。
ハボックはここに来てホークアイの考えていることが全てではないが分かったような気がしていた。
エドワードのためでもあるし、この隣で怒っているやらヘタレているやらの上司のためでもあったのだ。
休憩室を出ていくときにホークアイに言われた言葉を思い出し、またまた溜め息を吐いた。
そんなことも分からないのか?
と幾分怒りを含んだ視線で上官を見る。
ホークアイがこの男のために有休を取りこの男のために動いている。
腹ただしいことこの上ない。
まぁ、そんなことで怒っていてはこれから先もホークアイを想ってはいられないだろう。
ホークアイはロイの絶対の部下なのだから。
自分も。
服を買うしか用のない女性用のブティックを食い入るように見つめていた上官の表情に変化が生じた。
眉を潜め驚いたようでもあるし、笑顔でもある評し難い顔。
子供は笑い飛ばすか泣いて逃げ出しそうな変な顔だ。
やっと出てきたのだろうと、座って煙草を吹かしてたハボックは地面で煙草の火を消し携帯用の灰皿に煙草を入れ立ち上がり、上官の頭上から顔を除かせた。
ビックリして顎が上官の頭に落ちてしまった。
ロイは重みにも気付かないようで、固まっていた。
ブティックから出てきたのは、ハボックには眩しい私服姿のホークアイと、見たこともない美少女だった。
一見誰かと思ったが、ホークアイと一緒に出て行った相手と、ホークアイが手を引いていることを考えれば、エドワードしか考えられない。
どこから見ても女の子にしか見れない。
これで男の子と言ったら失礼に値し、この上官の焔に焼き尽くされてしまうだろう。
初めて見た本来の姿に二人は感動していた。
ホークアイがエドワードに服を買ってやり、しかもうっすら化粧までされている。
遠目からだったがその小さな顔はよく映えた。
服に合わせたピンク色のルージュ。今時のラメ入りだ。
眉も整えられ、綺麗な線を画いていた。
あぁ、あの唇に触れたい・・・。
とか思ってるんじゃないだろうな!?バッと、上官を覗きこめば、今にも飛んで行きそうな顔つきをして、身体が動き出そうとしていた。
変態親父のような顔をして・・・。
やめてくれ!!
そんな顔してるとエドワードに嫌われてしまいますよ!!?
さっきまでの苛々はどこかへすっ飛んでいって、情けない顔でフラフラ二人に近づこうとした。
動き出したロイの身体を後ろから羽交い締めにし、その顔で二人の前に立たせるのを阻止した。
「ちょっと!大佐!!」
「放せ!ハボック!私は行かねばならないのだ!」
どんな使命ですか!!
大の男が絡み合ってぎゃあぎゃあ言い合っているのは異様な風景だ。
通り人はもう見てみぬ振り。
関わりを持ちたくないと言っているようで、どこか早足で駆け去っている。
「あの二人まだどこかへ行くようですよ!」
言い合っている内に二人はさらに中央通りの中心部へと足を向けていた。
手をつないで。
このままでは見失ってしまう!!
ハボックは焦ったが、
「おい!ハボックなにをやっている。二人を追うぞ」
きりっとした表情だが、見るからに口元が上に上がっている。
楽しくて楽しくて仕方がない様子だ・・・。
自分の腕から抜け出た上官が、自分よりも遠くでこっちに向かって手を振っている。
いつのまに・・・。
さすがは軍人というべきか、だが、こんなところでこのような特技を出されても、本来のところで発揮してもらわなければあんまり意味がない。
ホークアイに連れていかれた先はなんと、ランジェリーショップだった。
おもわず目を見開いて、固まってしまった。
「おおおお〜!!?」
奇声を上げてぎぎぎと、ホークアイを振りかえり店を指差した。
何を言ってるの!みたいな顔をして、逃げ出そうとしたエドワードを捕まえ問答無用に店内へ引っ張り込まれた。
強引も強引。なんとも苛烈だ。
いざ、エドワードは未知の世界へ足を突っ込んだのだった。
ホークアイはエドワードを可愛くすることしか頭にない。
これが今エドワードにとって一番必要なものなのだ。
ブラジャーとショーツ。
二つともエドワードは一つも持っていない。
普通この年頃になると必ずしも着けなけらばならない物なのに、男装歴が長いエドワードはそんな物を持っているわずはなく、なにも着けていない状態だ。
しかも、下は男性用のトランクスの下に、これまた男性用のボクサーを履いている。
二重に履き回し。
さすがにトランクス一枚では心もとないと思ったのだろう。
色気の”い”の字も見当たらない・・・。
エドワードは、女性物の下着を着けてみたいとも思わなかったし、欲しいとも思わなかった。
てゆうか、こんな物の存在自体を忘れていたというか知らなかったというか・・・。
そもそも、男のままでこんなランジェリーショップなんかに入ったら、すぐさま自分が所属している軍部に連絡されてしまう恐れがある。
そんなことは死んでも避けたい。
黒髪の上官にばれたら今後一生からわれるだろう。
そう思うだけで体がぶるぶる震える。
女の格好をしていけばなにも問題はないのだが、そんなことまで頭が回らないのと、自分が男だと思っているので微妙に感覚が狂ってくるのだ。
まぁ、女の格好といっても女の服を一着も持っていないエドワードには無理な話。
服を持っていないから女装が出来ない。
女装が出来ないから、下着を買うことも出来ない。
下着を買うことができないから、男性用の物を使う。
という悪循環だ。
どうにかそこから抜け出して欲しい・・・。
これが良いキッカケになればいいのだが。
そう願うばかりのホークアイ。
エドワードはたいして気にも止めていないみたいなのだが。
それが、大問題。
エドワード自身が変わろうとしないからこうゆうことになるのだ。
看板を見てぼへ〜と、他人事のように眺めているエドワードの腕を強引に掴み、いざ店内へ。
え〜、みたいな顔をしていつのまにか店内に侵入していたエドワードだった。
店内は数人の客がおり、色取りどりでカラフルだ。
明るく内装されていて、暗い雰囲気不潔そうな感じはどこにもない。
光がふんだんに使われているため目がチカチカする。
下着を美しく見せるために、買わせるためにイロイロ努力をしているみたいだ。
店員もどの人も若く綺麗な人ばかりが、「いらっしゃいませ〜」と無駄な笑顔を振り撒く。
辺り一面輝かしい世界。
店員も美しい。
一瞬入る足がと待ってしまうほどだ。
ぱっと見、辺りを見渡すだけでサイズが豊富なブラジャー、ショーツがかなりの数がある。
他にもエドワードの知識にはないものがたくさんあった。
キャミソールがもっと豪華になったやつや、紐がついたりベルトらしき物がついたりした物まで置いてあった。
何に使うのだろう・・・?
疑問に思ったが、そこを素通りして行くので自分には関係のない物なんだ〜とあっけらかんと思っていた。
でもどれも、美しく綺麗に飾られている。
刺繍が満面に施されたもの、ひじょーに面積の狭いもの(こんなきわどいので隠れるのか!?)、いたってシンプルなもの・・・。
例えを上げるだけでも切りがない。
壁に留められ美しく飾ってある、まるで、蝶の標本みたいだ。
たかが下着なのに、如何してこんなに気合をいれて飾るのかエドワードには不明だった。
着けれればいいんじゃないの?程度のことしか考えられない子供だ。
こんなたくさんある中でどうやって選ぶのだ??
と疑問に思い半ば呆けながらホークアイの進むままに歩んでいたエドワード。
まるで自分には関係ないところにでもきているような感覚に陥る。
「まずは胸のサイズを測らないとね」
そうエドワードに言って、暇を持て余していそうな店員の近くへ行きサイズを測ってもらうように問い掛けた。
何だか勝手に事が進んでいるような気がするが、ホークアイが全てしてくれるのだから安心して任せようとするエドワード。
実際はもうめんどくさくて、早く宿屋に帰って読みかけの文献を読みたくなった。
その事を考え出すと、頭の中が文献一色に染まりそのことしか考えられなくなってしまうのがエドワードの悪い癖でもあり、良いところなのだが・・・。
そんなことは知らないホークアイはお願いをして、服屋と同様店員に手を引かれるまま一緒に試着室へと入ってしまった。
一緒に・・・?
「はい、服を脱いでください」
笑顔で言われ、はぁ!?状態。
どうして見知らぬ人の前で無防備に脱がなくてはならないのだ!
一気に慌てて恥ずかしくなり、大声でホークアイを呼んだ。
「どうゆうこと!?」
試着室から緊急に呼ばれたから何事かと思ったが、たいしたことではない、むしろくだらない事にホークアイは呆れかえって、
「エドちゃん・・・。人の話聞いてなかったわね?」
実際そうだったから返す言葉もない。
「うっ;;」
溜め息を吐きながら、
「今から胸のサイズを測って貰うのよ?」
「測る!?どうやって?」
「・・・・説明はいいから、実際にやってもらったほうが早いわ。お願いします」
焦るエドワードに対して何を言っても聞き入れなそうな雰囲気だったので、無視をした。
初めのセリフはエドワードに言い聞かせ、最後のセリフは、エドワードの後ろの方でちょっと困った風に笑っている店員に向かって発した言葉だ。
エドワードを無理矢理試着室にもどして、顎に手を当てて盛大な溜め息を吐く。
これほどまで無知だとは・・・。
将来が心配になってくる。
でも、私がしっかりイロイロ教えてあげれば、立派なレディになれるはずよ!と妙な方向へ思考が進んで行くホークアイ。
気分は母親状態だ。
無知な娘を持つと母親は本当に大変そうだ。
試着室ではエドワードの奇妙な声と店員の宥めるが強引の声が漏れる。
こっちが恥ずかしくて顔を覆いたいぐらいだった。
なんとかサイズを測り出てきたエドワードは顔を真っ赤にして、服の前をかき集めていた。
女性同士なのだからどうって事はないのだが、小学生もすっぽかして国家錬金術師になり、学校で女子同士がやるスキンシップみたいな物は体験していないから、無理はないとは思うが・・・。
エドワードにとっては同姓でも有り得ない行為だったらしい。
サイズを測るだけなのにだいぶ時間が掛かった・・・。
店員も苦笑いでホークアイの元へやってきて、エドワードのサイズを教える。
「彼女思ったよりも胸ありますね。65のDですよ」
アンダーが細いですから、一見胸が小さく見えるのですよ。
と、付け加えエドワードを見た。
エドワードは履き慣れない靴を一生懸命に足にはめ、どうにかこっちへやってこようとする。
ホークアイも驚いた。
エドワードの事だから(可哀想だが)胸も身長と同じでないものかと思っていた。
服の上から見てもふくらみは普通程度だったもので、Bくらいかそれ以下かと考えていた。
胸はなくてもブラジャーは絶対的に必要なものだから。
上司が喜びそうだ・・・。
喜び方が目に浮かぶ・・・。
あぁ、嫌だわ・・・。
遠くを見ながらそんなことを考えているホークアイにエドワードが近づいた。
「中尉、俺胸がでかいの嫌なんだ・・・」
店員にサイズを聞かされているだろうと思ったエドワードは、ホークアイに自分のコンプレックスを言う。
またまたホークアイは驚いた。
この子供は自分のサイズを知っていたのだ。
当たり前なのだが・・・。
いや、サイズは知っていなくとも胸が普通の人よりも大きいことが分かっていたのにもかかわらず、今までブラをしなかったのだ。
これでは胸が垂れてしまう!
「自分で胸が大きいと分かっていたのに、なんで今まで着けてなかったの!?」
ちょっと怒り気味で問いただすホークアイだが、エドワードは負けじと言い返す。
「だって、男の姿じゃこんな店入れないし、めんどくさくて今までサラシで押しつぶしていたから!」
「サラシで!?」
ホークアイはてっきり最低限のスポブラらしき物をつけているかと思ったが、まったくもってなにもしていなく、あまつさえ胸の形を悪くするであろうサラシで押しつぶしていたことに驚愕した。
「それに、俺こんな胸いらない。ブラ着けたらよけいに強調されちゃうし、俺まだ男装しつづけなきゃならないから・・・」
だんだんと声が小さくなっていき、俯いた。
ホークアイはこれほどまでにエドワードが思い詰めていた事を初めて感じた。
なにも考えていないように見えて、実際はちゃんと考えていたのだ。
たしかにブラを着けてしまうと、服の上からでも形や大きさがばっちり分かってしまうし、なにより男と偽っているのだ。
まだもとに戻れていないのに、今から女だということを公表してしまうとまずいことになる。
危険が伴うだろう。
でも、書類偽装ではないのでホークアイは本当の性別を明かしてもいいのだと思っている。
複雑な事だ。
でも、今は、
「今日は女の子の日でしょ?」
いつもの指令部で恐れられている女王様ではなく、ただ一人の女性としてエドワードに接するホークアイ。
女の子なんだから可愛くしなきゃ。
損しちゃう。
エドワードから可愛くしてと言ってきてくれた。
その願いを今存分に果たしてあげなくてはならないのだ。
今日が終わったらいつものエドワードに戻るだろう。
今日買ってあげた物はもう使わないかもしれない。
だから全力で取りかかってあげたい。
でしょ?
と、小首を傾げて下からエドワードを覗きこむ。
エドワードは憮然とした顔付きだったが、”女の子の日”という単語を聞いて、恥ずかしそうに微笑んだ。
そして、目線をホークアイに合わせ、
「じゃぁ・・・さ、下着を選ぼうか?リザさん」
自分のファーストネームを初めて呼んで、エドワードはにっこり微笑み嬉しそうに動き出した。
階級ではなく名前で呼ばれたことが対等の人間として接された気分になり、驚いたが嬉しくなった。
ホークアイは一安心と息を吐き、エドワードの後をついて足取り軽く店内を回った。
**TO,BE・・・**
中尉最強物語。いえいえ、違います。ロイ変態物語です。(え?)
うちのエド子は胸が大きい設定です。皆さん貧乳ですが、対抗しているわけではないのですが巨乳で。
やっぱ女として抑えているからこそ女の部分が強調されちゃうのだと思うんですよね〜(どんなですか)
ホントいつも長くてすいませんです;;読むのが困難でしょうが最後までよろしくお願いします;;
*2005.6.18